年末調整のやり方|中小企業の担当者が押さえる実務ステップと期限

「年末調整 やり方」で検索する方は、実際に事務を進めるための具体的な手順を知りたい状態だと思います。とくに中小企業では、人事・給与担当者や経営者自身が年末調整を担うことも多く、「誰が・いつ・何を・どの様式で」処理すればよいのかを一通り把握したいというニーズがあります。

本記事では、その実務ステップと期限を整理します。

📌 結論

  • 年末調整は会社(源泉徴収義務者)が行う年間精算。従業員は申告書や証明書類を提出する
  • 流れは「11月ごろから準備 → 12月に年末調整 → 翌年1月に給与支払報告書・法定調書等の手続き」
  • 年末在籍者でも、給与総額が2,000万円を超える人などは年末調整の対象外
  • 様式・控除内容は税制改正により変更されることがある。令和8年分の控除額・要件・様式は国税庁で必ず確認
  • 個別の税務判断に迷った場合は、税務署または税理士へ相談する

年末調整とは(実施主体と対象者)

年末調整とは、会社などの給与の支払者(源泉徴収義務者)が、従業員の給与から毎月天引きしてきた所得税および復興特別所得税と、その年に納めるべき年税額との差額を精算する手続きです。

源泉徴収とは、給与などを支払う際に、会社があらかじめ所得税等を差し引いて国へ納付する仕組みを指します。

会社が毎月の給与から天引きしている税額は、源泉徴収税額表などにもとづいて計算した金額です。この段階では、年間の給与総額や各種所得控除がすべて確定しているわけではありません。

そこで、その年最後の給与を支払う際などに、1年分の給与総額と各種控除をもとに正しい年税額を計算し、源泉徴収した税額の合計との差額を精算します。源泉徴収しすぎていれば還付し、不足していれば追加で徴収します。

年末調整の対象者

年末調整の主な対象者は、会社へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しており、次のいずれかに該当する人です。

ただし、年末まで在籍していても、次の人などは年末調整の対象になりません。

一方、年末時点で在籍していなくても、次のような一定の中途退職者は年末調整の対象になることがあります。

実施主体は源泉徴収義務者である会社などの給与の支払者です。従業員は必要な申告書や証明書類を提出し、会社がその内容をもとに年税額の計算と過不足の精算を行います。

対象者の判定は、給与額、退職時期、退職理由、他社から受け取った給与の有無などによって異なります。判断に迷う場合は、国税庁の案内を確認するか、税務署または税理士へ相談してください。

⚠️ 令和8年分は税制改正への対応が必要

令和8年12月1日以後に行う令和8年分の年末調整では、令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正などが適用されます。

あわせて、令和7年分から導入された特定親族特別控除にも引き続き対応が必要です。

控除額・所得要件・使用する様式は、税制改正により変更されることがあります。実際の年末調整では、必ず国税庁の令和8年度税制改正に関する案内と、令和8年分の年末調整関係書類を確認してください。

なお、令和8年11月30日以前に年末調整を行う一定のケースでは、改正後の控除等が適用されないことがあります。本記事では一般的な12月の年末調整を前提に、制度の枠組みと実務の流れを解説します。

年末調整の必要書類

年末調整では、従業員から提出された申告書と証明書類を確認します。主な申告書は次のとおりです。

ただし、扶養控除等(異動)申告書は、原則として年末に初めて回収する書類ではありません。その年最初の給与支払日の前日までに提出を受け、年末調整時には未提出や記載内容の異動がないかを確認します。

申告書 主な役割 提出・確認する人
扶養控除等(異動)申告書 扶養親族、障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生などの情報を申告する。原則として、その年最初の給与支払日の前日までに提出し、年末調整時には未提出や異動の有無を確認する 原則として、主たる勤務先から給与を受ける従業員
基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、特定親族特別控除、所得金額調整控除について申告する。令和7年分から4つの申告書が一体様式になっている 年末調整の対象者のうち、各控除の適用を受ける人
保険料控除申告書 生命保険料、地震保険料、一定の社会保険料、小規模企業共済等掛金などの控除を申告する 該当する保険料や掛金を支払った従業員
住宅借入金等特別控除申告書 住宅ローン控除を申告する。原則として初年度は確定申告が必要で、年末調整での適用は2年目以降。金融機関等が発行する年末残高証明書なども確認する 年末調整で住宅ローン控除の適用を受ける従業員

申告書の正式名称や構成は、税制改正により変更されることがあります。令和8年分の正式な様式は、国税庁の案内で確認してください。

誰が・いつ・何を・どの様式で行うか

観点 内容
誰が 源泉徴収義務者である会社などの給与の支払者が実施する。従業員は申告書の記入と必要な証明書類の提出を行う
いつ 原則として、その年最後の給与を支払う際に年末調整を行う。一般的な会社では11月ごろから書類の回収を始め、12月の給与や賞与で精算する
何を 給与総額と各種控除をもとに年税額を計算し、源泉徴収済みの税額との過不足を精算する
どの様式で 扶養控除等(異動)申告書、基礎控除申告書等の一体様式、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書などを使用する

年末調整のスケジュール(11月準備〜翌年1月の提出)

年末調整に関する実務は、一般的に「11月ごろから準備、12月に年末調整、翌年1月に給与支払報告書・法定調書等の手続き」という流れで進みます。

📋
11月ごろ 準備
申告書・証明書類の回収
🧮
12月 年末調整
年税額計算・過不足精算
📮
翌年1月 提出
支払報告書・法定調書等

11月ごろ:申告書と証明書類を回収する

従業員へ年末調整の案内を行い、必要な申告書と証明書類を回収します。

令和8年分については、令和8年度税制改正を反映した様式と計算方法を使用する必要があります。前年の申告書や給与計算システムの設定をそのまま流用しないよう注意してください。

12月:年税額を計算して過不足を精算する

回収した申告書と証明書類を確認し、給与総額と各種控除をもとに年税額を計算します。

年末調整は、原則としてその年最後の給与を支払う際に行います。実際にどの給与や賞与で精算するかは、自社の給与支払日と給与計算スケジュールに合わせて決定します。

翌年1月:給与支払報告書・法定調書等の手続きを行う

年末調整後は、源泉徴収票の交付や給与支払報告書・法定調書等の手続きを行います。

法定調書等の提出期限は、原則として支払の確定した日の属する年の翌年1月31日です。1月31日が土曜日・日曜日・祝日などに当たる場合は、原則として翌開庁日が期限になります。

なお、令和9年1月1日以後は、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合、その報告書に記載された給与について、税務署長へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす制度が適用されます。

ただし、給与以外の法定調書や法定調書合計表などの取扱いは別途確認が必要です。令和8年分の具体的な提出書類、提出先、提出方法、期限は、国税庁と各市区町村の案内で確認してください。

なお、社会保険の加入条件を含む労務全般の前提を整理したい方は「社会保険の加入条件 完全ガイド」もあわせてご覧ください。

AI・ツールで効率化できる部分と人が判断すべき部分

定型的な進捗管理や集計作業は、ツールやAIによる効率化と相性がよい領域です。

一方、次の判断は制度の理解と個別事情の確認が必要です。AIに任せきりにせず、人が最終確認してください。

AIが生成した控除額や税額を、そのまま給与計算へ反映するのは避けてください。税制改正の反映状況を確認し、国税庁の資料や最新の給与計算システムにもとづいて計算する必要があります。

個別の税務判断に迷う場合は、税務署または税理士へ相談してください。電子化ツールの最新仕様も年分ごとに変わる可能性があるため、導入前に国税庁の案内を確認しましょう。

進捗管理の具体的な仕組みは「年末調整タスクをNotion/AIで管理する」で解説します。

よくある質問(FAQ)

年末調整と確定申告の違いは?

年末調整は、会社などの給与の支払者が、従業員の給与について源泉徴収した所得税等と年税額との差額を精算する手続きです。

これに対し、確定申告は、納税者本人が1年間の所得と税額を税務署へ申告する手続きです。年末調整で課税関係が完結する人もいますが、年末調整で扱えない控除がある場合や、一定の副業所得がある場合などは、別途確定申告が必要になることがあります。

年末調整は従業員が自分で行うものですか?

いいえ。年末調整の実施主体は会社などの給与の支払者です。

従業員は必要な申告書や証明書類を提出し、会社が年税額の計算と過不足の精算を行います。その後、会社は源泉徴収票の交付、給与支払報告書や法定調書等について必要な手続きを行います。

年末調整のやり方は毎年同じですか?

基本的な流れは共通していますが、税制改正によって控除額、所得要件、計算方法、申告書の様式などが変更されることがあります。

令和8年12月1日以後に行う令和8年分の年末調整では、令和8年度税制改正による基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正などへの対応が必要です。

また、令和7年分から導入された特定親族特別控除にも引き続き対応します。前年と同じ控除額や様式を前提にせず、令和8年分の国税庁の案内を確認してください。

扶養控除等(異動)申告書は年末に提出するものですか?

原則として、その年最初の給与の支払を受ける日の前日までに提出します。年の途中で入社した場合は、入社後最初の給与の支払を受ける日の前日までです。

提出後に扶養親族などの状況が変わった場合は、異動内容を申告する必要があります。年末調整時には、未提出者がいないか、申告内容に異動がないかを確認します。

年末調整をすれば確定申告は一切不要ですか?

必ずしもそうではありません。

医療費控除、寄附金控除、住宅ローン控除の初年度など、年末調整で扱えない控除の適用を受ける場合は、本人による確定申告が必要です。

また、給与の収入金額が2,000万円を超える人、一定額を超える給与以外の所得がある人、2か所以上から給与を受け取っている一定の人なども、確定申告が必要になることがあります。

中途入社した従業員はどう扱いますか?

中途入社者については、前職で支払われた給与や源泉徴収税額などを含めて年末調整を行う場合があります。その場合、原則として前職が発行した給与所得の源泉徴収票によって、前職分の給与額や源泉徴収税額などを確認します。

前職の源泉徴収票が提出されず、前職分を確認できない場合は、年末調整を行えないことがあります。

中途退職した従業員はどう扱いますか?

年の途中で退職した人は、原則として年末調整の対象になりません。ただし、死亡退職、著しい心身の障害による一定の退職、12月に支給期が到来する給与を受け取った後の退職など、一定の場合は退職時に年末調整を行います。

退職理由や退職時期、退職後の給与受給見込みなどによって取扱いが異なるため、判断に迷う場合は国税庁の一次情報を確認するか、税務署または税理士へ相談してください。

翌年1月に税務署と市区町村の両方へ源泉徴収票を提出しますか?

令和9年1月1日以後は、市区町村へ給与支払報告書を提出した場合、その報告書に記載された給与について、税務署長へ給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなす制度が適用されます。

ただし、法定調書合計表や給与以外の法定調書など、別途手続きが必要な書類があります。令和8年分の正式な提出方法は、国税庁の法定調書作成・提出に関する案内で確認してください。

まとめ

年末調整は、会社などの給与の支払者が、従業員の給与から源泉徴収した所得税等と、その年に納めるべき年税額との差額を精算する手続きです。

実務は、次の流れで進めます。

  1. 年末調整の対象者を確認する
  2. 扶養控除等(異動)申告書の提出状況と異動の有無を確認する
  3. 各種申告書と証明書類を回収する
  4. 給与総額と所得控除額を確認する
  5. 年調年税額を計算する
  6. 源泉徴収済みの税額との過不足を精算する
  7. 源泉徴収票を従業員へ交付する
  8. 翌年1月に給与支払報告書・法定調書等の手続きを行う

令和8年分の年末調整では、令和8年度税制改正による基礎控除、給与所得控除の最低保障額、扶養親族等の所得要件などの改正に対応する必要があります。

様式や控除内容は税制改正により変更されることがあるため、前年の処理をそのまま繰り返すのではなく、国税庁が公表する令和8年分の案内と正式な様式を確認して進めましょう。

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