カスハラ義務化はいつから?2026年10月施行・中小企業の準備を解説

結論:カスハラ防止措置は2026年10月1日からすべての事業主の義務です

まず要点からお伝えします。

2026年10月1日 施行全事業主が対象令和7年法律第63号

施行まで3か月を切っています。未対応の企業は、指針の内容にもとづき、直ちに現状確認と体制整備に着手する段階です。以下で制度の中身と、施行前に着手すべき実務を具体的に解説します。

カスハラ義務化とは何か(制度・法令の解説)

法令上のカスハラの定義(3要素)

カスハラは、法令上、次の3つの要素をすべて満たすものと整理されています。

  1. 顧客等の言動であって、
  2. その業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

正当な申入れやクレームは、社会通念上許容される範囲を超えていなければカスハラには当たりません。あくまで「許容される範囲を超えた言動」で「就業環境が害される」ことが要件です。

「顧客等」には、顧客や取引の相手方だけでなく、施設の利用者(およびその家族)、今後利用・取引の可能性がある者なども広く含まれます。また、対面の言動だけでなく、電話・メール・SNSなどインターネット上の言動も対象になります。

事業主が講ずべき措置(5つの柱=下位項目まで数えると計10項目)

指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、事業主が雇用管理上講ずべき措置を次の5つの柱に整理しています。

📋
⑴ 方針の明確化・周知
☎️
⑵ 相談体制の整備
🔄
⑶ 事後の迅速な対応
🛡️
⑷ 悪質例への抑止措置
🔒
⑸ 保護・不利益禁止

⑶⑸のように下位項目まで数えると計10項目になります。「5分野・10項目」と表現されることもありますが、これは告示の見出しそのものではなく、下位項目を数えた要約である点にご留意ください。従来「4つの措置」と説明されてきましたが、今回はこの5つの柱で整理して確認するのが正確です。

障害者の合理的配慮の求めはカスハラに当たらない

指針では、障害者から合理的配慮(社会的障壁の除去)を求める意思表示そのものは、カスハラに当たらないことが明記されています。定義の3要素と照らし合わせて、正当な申入れとカスハラを混同しないよう注意が必要です。線引きに迷う場面では、指針やQ&Aを確認したうえで判断してください。

中小企業が施行前に行うべき実務

誰が・いつ・何を・どの様式で

準備は「誰が・いつ・何を・どの様式で」進めるかを整理すると迷いません。全体像は次の表のとおりです。

誰が いつ 何を どの様式で
人事・総務担当 施行前(〜2026年10月1日) カスハラの定義・方針・対処内容を決定 社内方針文書
人事・総務担当 施行前 既存の就業規則・ハラスメント規程・服務規律を確認し、必要に応じて対応方針・対処内容を追加 就業規則・規程・服務規律
人事・総務担当 施行前 相談窓口の設置・担当者の明確化 相談窓口案内・受付フロー
人事・総務担当 施行前 対応手順(事実確認・被害者配慮・再発防止)を整理 対応マニュアル
人事・総務担当 施行前 悪質なカスハラへの対処方針を定め、労働者へ周知 対処方針・周知文
経営者・管理職 施行前(10月1日まで) 従業員への周知・研修を実施 社内通知・研修資料
人事・総務担当 施行後 相談対応の記録・プライバシー保護・再発防止策の運用 相談記録票

準備チェックリスト

就業規則への追記は「必須」ではありません

⚠️ 就業規則への追記は一律の義務ではない

法や指針が求めるのは、方針・対処内容の明確化と労働者への周知・啓発、相談体制の整備などです。就業規則・服務規律への規定は「望ましい手段の一例」に位置づけられています。まず既存の規程を確認し、必要な範囲で対応方針を追加してください。

「カスハラ対策=就業規則への追記が必須」と誤解されがちですが、法や指針が一律に求めているのは、方針・対処内容の明確化と労働者への周知・啓発、相談体制の整備などです。就業規則・服務規律への規定は、あくまで望ましい手段の一例として位置づけられています。

まずは既存の就業規則・ハラスメント規程・服務規律・社内方針を確認し、必要に応じて対応方針や対処内容を追加するのが現実的です。なお、就業規則を変更し、その事業場が常時10人以上の労働者を使用する場合は、労働基準監督署への就業規則変更届が必要になります。

対応時期・期限

2026年2月26日
指針公布(告示第51号)
2026年10月1日
措置義務 施行

よくある誤解と正しい理解

AIで効率化できる部分・人が判断すべき部分

準備作業には、AIで下書きを効率化できる部分と、人が責任を持って判断すべき部分があります。ここを切り分けると、時間を節約しつつ品質も保てます。

AIで下書きを作りやすいのは、次のような領域です。

一方で、次の判断は人が確認・決定する必要があります。

AIが作った下書きはあくまで素案です。法令解釈や個別事案の判断はAIだけで断定せず、必ず人が確認・決定してください。判断に迷う場合は、専門家(社会保険労務士等)へ相談することも検討しましょう。

よくある質問(FAQ)

カスハラ対策は中小企業も義務ですか?

はい。対象は企業規模を問わず全事業主です。パワハラ防止措置がすでに中小企業を含めて義務化されているのと同様に、カスハラ防止措置も中小企業に適用されます。なお、中小企業向けの経過措置の有無は本記事執筆時点で未確認のため、最新情報の確認をおすすめします。

カスハラ対策はいつから義務化されますか?

施行日は2026年10月1日です。根拠は令和7年法律第63号(労働施策総合推進法等の改正)で、事業主はこの日時点で措置を講じている必要があります。

措置の具体的な中身はもう決まっているのですか?

はい。すでに指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日公布)で具体的な措置が示されています。厚生労働省はリーフレット・Q&A・施行通達も公表済みです。措置は⑴方針等の明確化と周知・啓発、⑵相談体制の整備、⑶事後の迅速かつ適切な対応、⑷悪質なカスハラへの抑止措置、⑸プライバシー保護・不利益取扱いの禁止、の5つの柱に整理されています。

就業規則にカスハラを追記しないと違反ですか?

就業規則への追記自体は、法的に一律の義務ではありません。求められるのは方針・対処内容の明確化と周知、相談体制の整備などです。就業規則・服務規律への規定は望ましい手段の一例と位置づけられています。既存の規程を確認し、必要に応じて対応方針を追加すれば足ります。

正当なクレームまで受け付けられなくなるのですか?

いいえ。カスハラは、①顧客等の言動であって、②社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害される、という3要素をすべて満たすものに限られます。正当な申入れは該当しません。カスハラ対策は正当なクレーム対応を禁止する制度ではありません。

障害のある方が配慮を求めることもカスハラになりますか?

いいえ。障害者から合理的配慮(社会的障壁の除去)を求める意思表示そのものは、指針上、カスハラに当たらないと明記されています。

まとめ

カスハラ防止措置は、2026年10月1日から企業規模を問わずすべての事業主の措置義務となります。

措置の具体的な内容は、すでに公布された指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日公布)で示されており、⑴方針等の明確化と周知・啓発、⑵相談体制の整備、⑶事後の迅速かつ適切な対応、⑷悪質なカスハラへの抑止措置、⑸プライバシー保護・不利益取扱いの禁止、の5つの柱に整理されています。

就業規則への追記自体は一律の義務ではなく、まずは既存の規程・体制を確認し、必要な範囲で方針・対処内容を整えるのが現実的です。施行まで3か月を切っているため、未対応の企業は指針の内容にもとづき、周知・研修も含めて施行日までに整備を終えられるよう、早めに着手することをおすすめします。

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