2026年 法改正 人事まとめ 施行日・対象・確度を一覧で整理

2026年は、人事・労務に関わる法改正がいくつも重なる年です。しかも、「施行済み」「施行日が確定している改正」「改正内容は決まっているものの施行日が政令待ちの項目」「審議中の未確定事項」が混在しています。
確度を取り違えると、社内周知や就業規則の改定、従業員への説明でつまずきかねません。
この記事では、中小企業の人事・総務担当者や経営者に向けて、2026年に押さえておきたい主な改正を「施行日・対象・確度」で区別して一覧にまとめます。(本記事は2026年7月18日時点の情報です)。
📌 結論
- 2026年は「施行済み」「施行前・施行日確定」「改正決定・施行日政令待ち」「未確定」が混在するため、確度の取り違えに注意
- 施行済み:女性活躍推進法の公表義務拡大、治療と就業の両立支援、在職老齢年金65万円、障害者法定雇用率2.7%
- 施行前で最重要:2026年10月1日のカスハラ・求職者等へのセクハラ対策の措置義務化
- iDeCoの拠出限度額引上げは2026年12月1日、50人未満の事業場へのストレスチェック義務化は2028年4月1日で正式確定済み
- 社会保険の企業規模要件は2027年10月から段階的に縮小され、2035年10月に撤廃されることが決定済み
- 社会保険の月額8.8万円以上という賃金要件は撤廃が決定しているが、施行日は政令待ち。最低賃金などの審議中事項とは分けて扱う
2026年の法改正 早わかり一覧
まずは、主な改正の全体像を確認します。確度は「施行済み」「施行前(施行日確定)」「改正決定(施行日政令待ち)」「未確定(審議中)」に分けています。
| 改正 | 施行日 | 対象 | 確度 |
|---|---|---|---|
| 女性活躍推進法(情報公表義務の拡大) | 2026年4月1日 | 常時雇用する労働者101人以上の事業主 | 施行済み |
| 治療と就業の両立支援(措置の努力義務化) | 2026年4月1日 | すべての事業主 | 施行済み |
| 在職老齢年金の支給停止基準額引上げ | 2026年4月1日 | 在職老齢年金の対象者 | 施行済み |
| 障害者法定雇用率 2.5%→2.7% | 2026年7月1日 | 常用労働者数37.5人以上の民間事業主 | 施行済み |
| カスハラ・求職者等へのセクハラ対策 | 2026年10月1日 | すべての事業主 | 施行前(施行日確定) |
| iDeCo等の拠出限度額引上げ | 2026年12月1日 | iDeCo加入者・企業型DC加入者等 | 施行前(施行日確定) |
| 社会保険の企業規模要件の段階的撤廃 | 2027年10月〜2035年10月 | 短時間労働者を使用する企業 | 施行前(段階的な施行日確定) |
| ストレスチェックの50人未満事業場への義務化 | 2028年4月1日 | 労働者数50人未満の事業場 | 施行前(施行日確定) |
| 社会保険の月額8.8万円以上という賃金要件の撤廃 | 公布から3年以内の政令で定める日 | 一定の短時間労働者 | 改正決定(施行日政令待ち) |
| 2026年度の地域別最低賃金 | 都道府県ごとに決定 | 各都道府県内の事業場 | 未確定(審議中) |
施行済みの改正(2026年4月・7月)
障害者法定雇用率 2.5%→2.7%(2026年7月1日)
常用労働者数37.5人以上
法定雇用率 2.7%
2026年7月1日から、民間企業の障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられました。これに伴い、障害者を1人以上雇用する義務や障害者雇用状況報告の対象となる民間事業主の範囲は、常用労働者数40.0人以上から37.5人以上へ変更されています。
ここでいう「37.5人」は、単純な在籍人数ではありません。原則として、週所定労働時間30時間以上の常用労働者は1人、週20時間以上30時間未満の短時間労働者は0.5人として算入するなど、障害者雇用率制度上の方法で計算します。
なお、2026年6月1日を基準日とする障害者雇用状況報告、いわゆるロクイチ報告では、施行前の基準日であるため、法定雇用率2.5%をもとに不足数などを確認します。
女性活躍推進法 情報公表義務の拡大(2026年4月1日)
2026年4月1日から、男女間賃金差異の公表義務が、常時雇用する労働者301人以上の事業主から101人以上の事業主へ拡大されました。
あわせて、女性管理職比率についても、常時雇用する労働者101人以上の事業主に公表が義務付けられています。「101人超」ではなく「101人以上」であるため、常時雇用する労働者がちょうど101人の企業も対象です。
- 301人以上:男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、所定の項目から2項目以上を公表
- 101〜300人:男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、所定の項目から1項目以上を公表
- 100人以下:情報公表は努力義務
101〜300人規模の企業では、男女間賃金差異だけでなく、女性管理職比率も必須項目になっている点に注意してください。
在職老齢年金 支給停止基準額の引上げ(2026年4月1日)
働きながら老齢厚生年金を受給する場合に、年金の一部または全部が支給停止となる基準額が引き上げられました。
2026年4月からは、老齢厚生年金の基本月額と、賞与を月割りした額を含む総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合に、超過額に応じて老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。給与そのものが減額される制度ではありません。
2025年度の支給停止調整額は51万円でした。法改正の成立時に公表された「62万円」は2024年度価格をもとにした金額であり、賃金変動を反映した2026年度の実際の基準額は65万円です。
基準額は年度ごとに改定されるため、従業員への案内では対象年度の最新額を確認してください。
治療と就業の両立支援 措置の努力義務化(2026年4月1日)
2026年4月1日から、疾病を抱える労働者の治療と就業の両立を支援するために必要な措置を講じることが、すべての事業主の努力義務となりました。
一般には「治療と仕事の両立支援」と呼ばれることもありますが、厚生労働省の2026年の指針では「治療と就業の両立支援」という表現が使用されています。
法的な措置義務ではなく努力義務ですが、事業主には、労働者本人からの相談に対応できる体制や環境の整備、必要な就業上の調整・配慮などが求められます。
指針の対象となるのは、雇用形態にかかわらず、反復・継続した治療が必要であると医師が判断した疾病・負傷を抱える労働者です。
施行前・施行日が確定した改正
カスハラ・求職者等へのセクハラ対策の措置義務化(2026年10月1日)
カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラ対策と、就職活動中の学生など求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が、事業主の措置義務となります。
施行日は2026年10月1日で、企業規模を問わず、すべての事業主が対象です。根拠は、2025年6月11日に公布された令和7年法律第63号です。
本記事の基準日である2026年7月13日時点では、施行前の準備段階です。事業主は、施行日までに次のような措置を整える必要があります。
- カスハラや求職者等へのセクハラを許容しないという方針の明確化・周知
- 相談窓口など、相談に適切に対応できる体制の整備
- 相談があった場合の迅速かつ正確な事実確認
- 被害を受けた労働者や求職者等への配慮・対応
- 行為者や顧客等への適切な対応
- 再発防止措置
- 相談者等のプライバシー保護
- 相談したことなどを理由とする不利益取扱いの禁止と周知
対応マニュアルの作成は、それ自体が一律の独立した法定義務というわけではありませんが、相談受付から事実確認、社内判断、顧客等への対応までを統一するための実務上有効な準備です。
詳しい実務は、個別記事(カスハラ対策:P0-10/求職者等へのセクハラ対策:P0-11)で解説します。
iDeCo等の拠出限度額引上げ(2026年12月1日)
iDeCoや企業型確定拠出年金などの拠出限度額は、2026年12月1日から引き上げられます。施行日は政令により正式に確定しており、「予定」や「政令待ち」ではありません。
主な変更は次のとおりです。
- 国民年金第1号被保険者等のiDeCo拠出限度額:国民年金基金等との合計で月6.8万円から月7.5万円へ引上げ
- 企業年金に加入する会社員等:企業年金とiDeCoを合計した共通の拠出限度額を月6.2万円へ引上げ
- 企業型確定拠出年金の拠出限度額:月5.5万円から月6.2万円へ引上げ
実際にiDeCoへ拠出できる金額は、勤務先の企業年金制度、事業主掛金額、他制度掛金相当額などによって異なります。従業員への案内では、一律に「全員が月6.2万円まで拠出できる」と説明しないよう注意してください。
ストレスチェックの50人未満事業場への義務化(2028年4月1日)
現在、労働者数50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施が努力義務とされていますが、2028年4月1日から実施義務の対象になります。
施行日を2028年4月1日とする政令は2026年6月に公布されているため、本記事の基準日である2026年7月13日時点では正式確定済みです。
事業者は、2028年4月1日から2029年3月31日までの最初の1年間に、対象労働者への初回のストレスチェックを実施する必要があります。
なお、義務の判定は企業全体の従業員数ではなく、原則として事業場単位で行います。複数の支店・店舗・営業所を運営している企業は、それぞれの事業場について準備が必要です。
施行日が決まっている社会保険制度の改正
社会保険の企業規模要件の段階的撤廃(2027年10月〜)
短時間労働者への社会保険適用に関する企業規模要件は、2025年に成立した年金制度改正法により、段階的に縮小・撤廃されることが決まっています。
単なる検討中のロードマップではなく、段階的な施行時期も法律で定められています。
- 厚生年金保険の被保険者数が36〜50人の企業:2027年10月から
- 厚生年金保険の被保険者数が21〜35人の企業:2029年10月から
- 厚生年金保険の被保険者数が11〜20人の企業:2032年10月から
- 厚生年金保険の被保険者数が1〜10人の企業:2035年10月から
2035年10月以降は企業規模要件が撤廃され、企業規模にかかわらず、週の所定労働時間が20時間以上などの要件を満たす短時間労働者が社会保険の適用対象となります。
ここでいう企業規模は、単純な全従業員数ではなく、原則として厚生年金保険の被保険者数を基準に判定します。
企業規模要件を満たさない場合でも、労使の合意にもとづき、任意特定適用事業所として短時間労働者に社会保険を適用できる制度があります。
標準報酬月額の上限引上げ
厚生年金保険の保険料や年金額の計算に使用する標準報酬月額の上限も、次のとおり段階的に引き上げられます。
- 65万円から68万円:2027年9月
- 68万円から71万円:2028年9月
- 71万円から75万円:2029年9月
高い報酬を受ける被保険者については、本人負担・事業主負担の厚生年金保険料が増える可能性があります。
個人事業所への適用拡大(2029年10月)
2029年10月から、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所について、業種による社会保険の適用除外が原則として解消されます。
ただし、施行時点ですでに存在している個人事業所については、当分の間、従来の取扱いが維持される経過措置があります。
改正は決まっているが施行日が政令待ちの項目
社会保険の月額8.8万円以上という賃金要件の撤廃
短時間労働者が社会保険に加入する要件の一つである「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件は、2025年に成立した年金制度改正法により撤廃されることが決まっています。
ただし、施行日は「公布の日から3年以内の政令で定める日」とされており、本記事の基準日である2026年7月13日時点では正式な施行日が確定していません。
したがって、社内周知では次のように説明するのが適切です。
⚠️ 撤廃は決定済み、施行日は政令待ち
月額8.8万円以上という賃金要件の撤廃そのものは、成立済みの法律により決定しています。一方、具体的な施行日は政令で定められるため、現時点では未確定です。「撤廃が検討されている」と「撤廃は決まっているが施行日が未確定」を区別して周知してください。
未確定・審議中の事項
2026年度の地域別最低賃金
地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会が示す改定額の目安を参考に、各都道府県の地方最低賃金審議会で審議され、都道府県労働局長が決定します。
本記事の基準日である2026年7月13日時点では、2026年度の都道府県別の最低賃金額や発効日は確定していません。
最低賃金は全国一律の金額・発効日ではないため、事業場が所在する都道府県ごとに確認する必要があります。複数の都道府県に事業場がある企業は、それぞれの地域別最低賃金を確認してください。
自社が対象か点検するチェックリスト
自社が各改正の対象になるかを、次のリストで点検してください。
- ☐ 障害者雇用:障害者雇用率制度上の方法で計算した常用労働者数が37.5人以上か確認した
- ☐ 障害者雇用:該当する場合、法定雇用率2.7%を満たしているか確認した
- ☐ 女性活躍:常時雇用する労働者が101人以上か確認した
- ☐ 女性活躍:該当する場合、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表準備をした
- ☐ 在職老齢年金:対象となる従業員へ、2026年度の基準額65万円を案内できる状態にした
- ☐ 両立支援:治療と就業の両立支援について、相談対応や就業上の配慮を行う体制を確認した
- ☐ カスハラ:2026年10月1日に向け、方針・相談窓口・対応手順の整備に着手した
- ☐ 求職者等へのセクハラ:採用担当者への研修や相談対応体制を確認した
- ☐ iDeCo:2026年12月1日の拠出限度額引上げについて、従業員へ案内する内容を確認した
- ☐ 社会保険適用拡大:厚生年金保険の被保険者数をもとに、自社が対象となる時期を確認した
- ☐ ストレスチェック:事業場ごとの労働者数と、2028年4月に向けた実施体制を確認した
- ☐ 8.8万円要件撤廃:施行日を定める政令の公表を確認する担当者を決めた
- ☐ 最低賃金:事業場ごとに、所在する都道府県の改定額と発効日を確認する予定を立てた
よくある質問(FAQ)
Q1. 障害者雇用率2.7%は、すべての民間企業で障害者を1人以上雇用する義務が生じるという意味ですか?
いいえ。2026年7月1日以降、障害者を1人以上雇用する義務や障害者雇用状況報告の対象となるのは、障害者雇用率制度上の常用労働者数が37.5人以上の民間事業主です。
37.5人は単純な在籍人数ではなく、短時間労働者を原則0.5人として算入するなど、制度上の方法で計算します。
Q2. 2026年6月1日の障害者雇用状況報告にも2.7%が適用されますか?
いいえ。2026年6月1日時点の報告では、施行前の法定雇用率である2.5%をもとに不足数などを確認します。2.7%への引上げは2026年7月1日からです。
Q3. 女性活躍推進法の公表義務は「101人超」からですか?
いいえ。正しくは「常時雇用する労働者101人以上」です。ちょうど101人の事業主も対象になります。
2026年4月1日からは、男女間賃金差異の公表義務が101人以上へ拡大されるとともに、女性管理職比率も101人以上の事業主の公表必須項目になりました。
Q4. 在職老齢年金の支給停止基準額は62万円ですか?
2026年度の実際の基準額は65万円です。62万円は法改正成立時の2024年度価格をもとにした金額です。
2026年4月以降は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が65万円を超える場合に、超過額に応じて老齢厚生年金が支給停止されます。
Q5. ストレスチェックの50人未満事業場への義務化は、まだ方針段階ですか?
いいえ。施行日は2028年4月1日で正式に確定しています。施行日を定める政令は2026年6月に公布されました。
対象となる事業場では、2028年4月1日から2029年3月31日までの間に初回のストレスチェックを実施する必要があります。
Q6. iDeCoの拠出限度額引上げは、まだ予定ですか?
いいえ。施行日は2026年12月1日で正式に確定しています。ただし、実際に拠出できる上限額は、加入区分や勤務先の企業年金制度などによって異なります。
Q7. 社会保険の企業規模要件は、いつ撤廃されますか?
2035年10月に撤廃されます。それまでに、2027年10月、2029年10月、2032年10月の3段階で対象企業が拡大されます。
企業規模は単純な全従業員数ではなく、原則として厚生年金保険の被保険者数をもとに判定します。
Q8. 月額8.8万円以上という社会保険の賃金要件は、まだ撤廃が検討されている段階ですか?
撤廃そのものは、成立済みの法律によって決定しています。ただし、具体的な施行日は「公布の日から3年以内の政令で定める日」とされており、2026年7月13日時点では確定していません。
Q9. 治療と就業の両立支援は、法的義務になったのですか?
2026年4月1日から、すべての事業主に対する努力義務になりました。措置義務ではありませんが、厚生労働省の指針にもとづき、相談体制や就業上の調整・配慮などに取り組むことが求められます。
まとめ
2026年は、施行済みの改正、施行日が確定している改正、改正内容は決まっているものの施行日が政令待ちの項目、審議中の事項が重なっています。
施行済みの主な改正は、女性活躍推進法の情報公表義務拡大、治療と就業の両立支援の努力義務化、在職老齢年金の基準額65万円への引上げ、障害者法定雇用率2.7%への引上げです。
今後の改正では、2026年10月1日のカスハラ・求職者等へのセクハラ対策、2026年12月1日のiDeCo等の拠出限度額引上げが重要です。いずれも施行日は正式に確定しています。
さらに、社会保険の企業規模要件は2027年10月から段階的に縮小され、2035年10月に撤廃されます。50人未満の事業場へのストレスチェック義務化も、2028年4月1日施行で確定済みです。
一方、社会保険の月額8.8万円以上という賃金要件については、撤廃自体は決定していますが、施行日は政令待ちです。2026年度の地域別最低賃金は審議中であり、都道府県別の金額・発効日が決まるまでは未確定事項として扱います。
重要なのは、それぞれの「施行日・対象・確度」を取り違えないことです。自社が対象に該当するかの最終判断や就業規則・社内規程の改定は、人数の数え方、雇用形態、事業場単位の判定なども含めて慎重に確認してください。