採用を開始する前に、自社分析をはじめましょう。
なぜ自社分析が必要なのか
結論からいうと、自社が抱えている問題が採用で解決できるか見極めるためです。
何かしら経営戦略や組織戦略に問題があるとして、それに対する解決法が採用なのかどうかを見極める必要があります。もし解決法が採用でない場合に、これからスタートする採用活動は無駄なものになってしまいます。
会社の問題や課題を理解できるところまで小さく砕いて、その解決法が採用である場合にだけ採用活動をすべきです。つまり全ての問題が採用で解決できるわけではないとうことを採用担当者は理解しておく必要があります。
経営方針の理解
採用担当者は、採用だけすればよいわけではありません。経営方針を理解し、その中で採用という手段が適しているかどうか判断する力が求められます。
採用戦略と経営戦略
採用戦略を考えるときに考慮しなければならないのが、経営戦略です。
採用担当者は、経営者に経営方針やスタンス、競合他社、これからどういう部分に力をいれていくかなどインタビューしなければなりません。
- 経営方針
- スタンス
- 競合他社
- 強化部門など
経営者の話は、もしかすると具体的ではなく抽象的な内容が多いかもしれません。しかしその内容を理解して演繹的に、どういう人物の採用が必要なのかイメージしていくことが大切です。
経営者インタビューの目的
このインタビューの目的は
- 「なぜ採用が必要なのか」
- 「どうして採用しなければ解決しないのか」
ということを明確にすることにあります。採用担当者が、これらのことを言語化できるようにしましょう。
そして「なぜ採用するのか」を言語化できるほどに理解できれば、合わせてこのタイミングで
- 採用予算
- 求める人物像
についてもすり合わせして確認しておきましょう。経営方針のインタビュー時に採用予算や求める人物像について確認することができれば、今後の採用活動がスムーズにすすみます。
売上構造の理解
経営方針の理解と同様に大切なのは、売上構造の理解です。
人材戦略を語るに不可欠な売上構造
売上構造が理解できれば、経営者の話も理解しやすくなります。また理解深度によっては経営者と対等に人材戦略について議論することができます。
意外に自社のビジネスモデルのキードライバーが何であるか説明できない人もいるのではないでしょうか。採用担当者は自社のサービスがどのような売上構造なのか理解しなければなりません。
各部門の理解
経営方針と売上構造が理解できれば、いま自社に足りていないパーツが見えてきます。しかしそれではまだ足りません。
各部門にもインタビューしましょう。現場の雰囲気や活躍している人を知ることで、採用する場合はどのような人物像が良いのか明確になりますし、そもそも採用することが適切かどうか判断することができます。
各部門へのインタビュー
経営者のインタビューで聞いた内容が正しいか現場にも同様にインタビューしましょう。
大手企業であれば経営者にインタビューしたあとに各部署にまたインタビューするのは多くの時間が必要かもしれません。しかしここでは、中小企業やベンチャー企業を想定していますので、その場合は必ず各部署へのインタビューも忘れずに採用担当者が行うようにしてください。
一次情報に触れましょう
なぜ各部門にインタビューをするのか、それは一次情報に触れて欲しいからです。
当事者以外からの話は、どうしても事実が間違って認識されていたり、脚色されていることもあります。会社の規模が大きくないのであれば、採用担当者みずから多方面にインタビューするメリットが大きいです。
インタビュー例
いくつかインタビューの際に見極めるポイントについて例示しています。
共通チェック項目
- 各部署の雰囲気はどうなのか
- 仕事は忙しいそうか暇そうか
- 働いている数人と話してみる
- 仕事のやりがいを聞いてみる
- 仕事の不満・不安を聞いてみる
- 仕事の課題を聞いてみる
- 部門マネージャーの思考性
- 部門マネージャーと部下との関係性
- 部門間の連携は取れているか
モノづくり
- 生産ラインの稼働状況
- 作業を手伝ってみる
販売
- 販売活動をしてみる
- 可能であれば顧客と接する
ソフトウェア開発
- 開発現場で過ごす
- アーキテクチャについて説明してもらう
地方の場合
- 現地にいく
インタビューを意味のあるものにするために、必ず事前準備をしてからアポをとりましょう。各部署は、日常業務の合間に時間をとってくれています。その意識をもって、意味のあるインタビューを心がけて頂けたらと思います。
競合他社の理解
自社の分析ができたら、経営者のインタビューを参考にして競合になりそうな企業のリサーチも合わせてしておきましょう。
リサーチ項目
企業リサーチは、粒度を考えなければ無限に行うことができますので、ここでは以下項目に限ってリストアップしてください。
- 同業他社
- 似たブランディング
- 似た会社ステージ
- 人数規模
コストをかければリサーチ会社に依頼することもできますが、採用に限っていえば情報過多で必要ない情報もありますので、競合会社のホームページや求人サイトで上記項目について自社と似たところがないか検索して把握しておく程度に留めておきましょう。
ビジネス分析ツールの利用
ここでは自社分析に役立つビジネス分析ツールを紹介します。世の中には多くのビジネス分析ツールがありますが、自社分析に関していえばこの3つ作成できれば十分だと思います。
リーンキャンパス
リーンキャンバス(Lean Canvas)は、「Runnnig Lean」の著者として知られるアッシュ・マウリャ氏が提唱するビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークで、ビジネスモデルを企画または整理する際に最適な手法です。
- 顧客セグメント
- 課題
- 独自の価値提案
- ソリューション
- チャネル
- 収益の流れ
- コスト構造
- 主要指標
- 圧倒的な優位性
これら9つの要素について、分類しながらビジネモデルを理解します。
ロジックツリー
ロジックツリーは、抽象的な概念を具体的にしていくときに用いられる思考ツールです。ここでは売上構造の理解に、ロジックツリーを利用します。「モレなく、ダブリなく」を意識しながら、要素を細分化していきます。
3C分析
外部環境と市場・顧客の分析、自社の状況と照らしながら自社の戦略に活かすフレームワークです。3Cは、「市場(customer」「競合(competitor)」「自社(company)」の頭文字です。
採用担当者の3C分析は全て「採用」に関連した言葉に置きかわります。
- 採用市場・求職者
- 競合の採用
- 自社の採用
自社の強みは、採用にどのように活かせるのか整理します。また採用市場ではどのような求職者が採用できそうか、競合他社とどのように差別化していくか、これからどういうメッセージを出していくかなど採用活動を始めるにあたって情報を整理するために役立ちます。
さいごに
このトピックスでは、自社分析についてまとめました。
具体的には
- 経営方針の理解
- 売上構造の理解
- 各部門の理解
- 競合他社の理解
という項目に沿って、どのように進めていくか解説しています。
多くの情報を扱うことになると思いますので、混乱しないようにビジネス分析ツールを上手く役立てて欲しいと思っています。
仕事を生産的なものにするには、四つのものが必要である。
すなわち
①分析である。仕事に必要な作業と手順と道具を知らなければならない。
②総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
③管理である。仕事のプロセスの中に、方向づけ、質と量、基準と例外について管理手段を組み込まなければならない。
④道具である。
自社分析は時間がかかる仕事ですが、これから採用活動を生産的なものにするために外せないステップです。
採用担当者として、大切な仕事なので経営者や部署と円滑なコミュニケーションをとりながら進めていきましょう。